「どうしたのよ? 浮かない顔をして。ひょっとして、まだ悩んでるの?」
「ん~~~」
ミカはアルが冒険者として、どの職業に就くかを悩んでいることを知っていた。アルは腕を組みながら唸っている。
「自分の好きな道を、選べばいいじゃない? それとも、またおじいちゃんに何か言われたの?」
「まあな。盾使いになれって、しつこいんだよ」
アルのおじいさんは、昔、盾使いだった。そのため、アルにもそれを継がせようとしていた。
「でも、そんなこと言っても、今から授かるスキル適正が盾向きなんて決まってるわけじゃないんだし、気にしても仕方がないでしょ」
ミカの話は最もだった。
この星にはスキル適正と呼ばれるものがある。アルのおじいさんは日本人なため、これを所持していない。しかし、その子供がこの星の者と結婚を果たして生まれアルには、これが芽生えている。
スキル適正は、十五歳を過ぎたあとにギルドで解放の儀式を行うと判明する。そのあと、その適正と相談しながら自分の冒険者としての道を選ぶことが一般的だ。但し、この年齢制限は体に負担なくスキルを扱えるようになるのが15歳以上ということで、この街で決めたものだ。他の街ではこの限りではない。
「まあな。盾使いも悪くはないと思うけど…、やっぱりな~」
アルは悩んでも仕方がない事をいちいち悩むタイプだったがその時、
『ワァァァーーーーー!!!』
大歓声が至る場所から沸き起こった。今日は街中がお祭り騒ぎで、道に屋台なども並んでいる。
「凄いわよ! 見て見て!」
ミカがアルの顔をグイっと動かした。そこには巨大なモニターが設置されていて、スカイボールと呼ばれるスポーツが映し出されている。
「今日は、決勝だったか? どっちが勝つんだろうな~」
「決まっているわよ! ミノタウロス・ホーンが勝つわ!」
ミカはこのスカイボールのファンだった。アルを連れ回して観戦に出かけるほどだ。
「置いて行くぞ~」
興味なさそうにして、アルは人込みの中を歩いて行く。
「ちょっと待ってよ!」
置いていかれたミカは慌ててアルを追いかけ、再び隣に並んだ。
「少しぐらい、見ていたっていいじゃない。アルのケチ」
アルはそれよりも、今から決まる自分のスキル適正が気掛かりだった。

にほんブログ村

ファンタジー・SF小説ランキング
0 件のコメント:
コメントを投稿