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2023年12月13日水曜日

17.二匹目

 

 クロムとバリアントの戦闘が始まる。


 クロムはAランクの冒険者だ。バリアントと言えど、一層に現れる奴に後れを取ることはない。ハサミの攻撃を軽く躱しながら、それを切り飛ばす。


「すご~い!」


「私達なら、あれぐらい平気だよ~」


「うん」


 ミカ達は驚いているが、キキとミルフィーはリラックスしている。


「そっ!」


『ドスン!』


 アルが何か言い掛けたがその時、隣にある大岩の上から二匹目のバリアントが飛び降りた。


 すぐさま、ミルフィーがその場から飛び退く。ミルフィーもブルーウォークのパーティーメンバーだ。普段はおっとりしいて弱く見えるが、戦闘能力は高い。しかし、未熟なアルとミカはその場に取り残される。


「きゃーーー!」


「どうした!?」


 ダンジョン内にミカの悲鳴が響き渡る。声を上げたクロムが振り向き、ミカに狙いを定めたバリアントが腕を大きく振り上げる。キキがそれを許すはずがなく、咄嗟に二丁の拳銃を構える。


「チッ!」 


 しかし、怯んだアルが射線上に重なり舌打ちした。


「ミ…、ミカー!」


 振る声を上げたアルは、咄嗟にミカに肩でぶつかりその場を入れ替わる。バリアントの振り上げた腕がアルを襲う。


『パン! パン!』


「これって…」


『ガキン!』


 アルは呟きながら頭上に構えた剣でそれを受け止めたが、そのまま大きく吹き飛ばされた。


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2023年11月15日水曜日

15.コセ


 「古代生物って機械なのに、何で生物って呼ぶの?」


「そ、それは…」


「古代機械じゃあ、よく分からないからよ。古代兵器って呼んでも、なんかしっくりこないし。それに、あいつらは何かの意志を持って動いてるように見えるの」


「何かの意思って?」


「それは…」


「右からコセだ!」


 アル達はクロムたちに合流し、ミカがミルフィーに尋ねた。もじもじと答えられないのを見かねたエルルが説明し、ミカが再び首を傾げて尋ねた。返事を戻そうとする中、いち早く奴らに気付いたクロムが叫んだ。ちなみに、古代生物では名前が長いので、省略をしてコセと呼ばれている。


『ガシャガシャガシャガシャ』


「任せろ」


 ぞろぞろと群がるコセたちを目にしたグレンが、動じずに小さく応えた。普段無口だが戦闘中は声を出すようだ。


「前も気を付けて! 奴らは、たまに集団で襲って来るから!」


「前からも来ました!」


「マックス! 全員を守れ! 俺が、道を開けてくる!」


「無理すんじゃないわよ~!」


 エルルが注意を飛ばし、ミルフィーが応えた。クロムは指示を飛ばし、エルルが声を掛けた。


【ライジング・サン!】


 クロムはスキルを使った。電気を帯びたように体が輝き、高速で前方の群れを突き破る。


【サンダー・ランス!】


 続けて槍を頭上で回転させ、放たれた稲光で周囲の奴らを一掃した。


「やっぱり、クロムは強いなー!」


「あっという間に、倒しちゃったわ!」


 アルは憧れの眼差しで、ミカは驚いた表情でクロムの姿を見ていた。


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2023年11月9日木曜日

14.古代生物

 

 アル達は洞窟側を直進する。鉄板側は足元が滑るためだ。そして、しばらく進むと、


『カシャカシャカシャ』


「止まれ!」


 クロムが右腕で皆を制止させた。


「ここは、あいつらが居るのね」


「らしいなっ!」


『グシャン!』


 エルルが話し終えると同時に、クロムが叫びながら前方の暗闇に飛び込み何かを潰した。


「こいつは、めんどくせえな」


「ねえ、アル。私、見えないんだけど…」


「俺も、見えない…」


 クロムが呟くと、ミカとアルが言葉を交わした。周囲が薄暗いためクロムの行動が見えかったようだ。


「あっ。そう言えば、ダンジョンは初めてだったわね。ミルフィー。お願い」


「は、はい!」


【ライト】


 エルルの話に応えたミルフィーが、ライトの魔法を使った。光の球が上空に浮かび周囲を照らす。クロムは槍に何かを突き刺し、アル達の方へ飛ばす。


『ガシャン!』


「なっ、何だこれ!?」


「何よこれ!?」


 アルはそれに近付き、ミカはたじろいだ。


「古代生物です。ここは古代生物のダンジョンみたいです」


「古代生物?」


「魔物じゃないの?」


「はい。古代生物は機械のような体をしていて、魔物とは少し違います」


「魔物は生き物。古代生物は機械~」


 ミルフィーが説明するとアルとミカは首を傾げた。更にミルフィーが説明を付け加え、キキが古代生物と呼ばれるものに歩み寄る。それ持ち上げたキキは匂いを嗅ぎながらうっとりし、初めて表情を露わにする。


「いい匂~い」


 キキは銃を扱うからか、この匂いが好きなようだ。


「おまえら、置いて行くぞ!」


 クロム達は先に進んでいた。アル達は急いでそのあとを追う。


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2023年11月4日土曜日

13.ダンジョン内部

 

「中も他と変わらないわね」


「入り口から、想定済みだ」


 エルルとロンドが辺りを見回している。


 ダンジョン内は半分が岩でできた洞窟で、残り半分が鉄板が張られたような作りになっている。天井は洞窟側が5メートル程で、鉄板側は高すぎて上まで見通せない。所々から突き出た岩が光を放ち、辺りを薄っすらと照らしている。


「ここは当たりだな」


「そうね。暑くもないし寒くもないし、おまけに明かりまで付いてるんだから、ここは期待できそうね」


 ダンジョンはここのように、環境が良いという訳ではない。他のものは灼熱地帯や極寒のものあり、それプラス真っ暗闇という場所もある。このダンジョンは環境の良いダンジョンと呼べる。


「俺が先頭行く。キキとミルフィーはアル達の護衛で、マックスは殿だ。エルルとグレンはいつも通り、全体のサポートをしろ」


「わかったよ~」


「頑張ります!」


「「お願いします!」」


「了解ですな」


「わかったわ」


「…」


 グレンは返事を戻さずに頷いた。


「よ~し。奥に進むぞ!」


 クロムは周囲を威嚇をするように、声を張り上げた。


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2023年10月28日土曜日

12.渦

 

 先を行くクロムが地上に降りて行く。どうやら目的地を見つけたようだ。アル達は少し遅れて、クロムの立っている場所に到着する。


 アルはボードから飛び降りて、クロムの横に並び立つ。


「これがダンジョンなのか?」


「そうだ」


 黒光りを放つ半径2メートルほどの渦が、空中に浮かんでいる。これがこの世界のダンジョンの入り口だ。


「あまり大きくないわね」


「聞いてた通りだな。この程度なら問題なく中を調べられそうだ。おい、お前ら! 支度しろ!」


「はい!」


「は~い」


 エルルがクロムの隣に立ち話かけると、クロムは応えながら皆に指示を飛ばした。ミルフィーがはっきり返事を戻し、キキが手を上げて応えた。それを合図に他のメンバーも動き出し、自分たちの装備の確認を始める。


「クロム」


「何だ?」


「乗り物はどうするんだ?」


 アルが乗り物に顔を向ける。


「ああ…。キキ、乗り物をお願い!」


「わかった~」


 隣に居るエルルが応え、キキが緩く返事を戻した。キキは乗ってきた乗り物の前で腰に付けている小型の箱を外し、蓋を開く。


【ストレージ~】


 そう声を出すと、目の前の乗り物が箱の中に消えた。側に居るミカが驚いている。


「なっ、何だあれ!?」


「アーティファクトよ。名前くらいは、聞いたことあるでしょ?」


「あれが、アーティファクトか!」


 アルも驚いたが、エルルの話で興奮し始める。この星にはアーティファクトと呼ばれる物が存在する。


 アーティファクトは古代文明の遺産とも呼ばれ、各地の遺跡やダンジョンなどで発見されることが稀にある。とても貴重な物のだが、クロムたちはそれをいくつか持っている。


「よ~し、お前ら~。中に入るぞ!」


「ですな!」


「しかたない。やるか」


 支度が終わりクロムが声を掛けると、マックスとグレンが返事を戻した。こうして、発見されたばかりのダンジョンの調査が始まった。


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2023年10月24日火曜日

11.乗り物


 街の外に出ると、大きな荷台の付いた乗り物と小さ目な2つの乗り物が用意されている。アルとミカは、キキとミルフィーに付いて行く。


「私達は、これで行くよ~」


 キキが小さ目な2つの乗り物を紹介する。乗り物は2、3人が乗れるほどのサイズの板で、地面からは少し浮いている。前の部分には、上部が丸い形をした

舵取りのポールが立てられている。


「運転中は落ちないように、私達に掴まってね~」


「ミカちゃんは私の後ろに乗って」


 キキとミルフィーはそれだけ伝えると、板の上にぴょんと飛び乗る。勢いで

板が揺れることなく、安定した乗り物のようだ。アル達もそれに続いて板の上にぴょんと飛び乗る。


「それじゃ~、出発するよ~」


「ちょ、ちょっと!?」


 急発進でバランスを崩し、アルはキキにしがみつく。


「アルちゃん。私の大事なところは触らないで~」


 小さな二つの山を握られたキキは、無感情な声でアルに注意した。


「わわっ! ご、ごめんなさい…」


 アルは顔を赤くした。


「あいつ~! どさくさに紛れて、何やってるのよ! いやらしいわね~キャッ!」


「ミカちゃん、落ち着いて。あんまり動くと落ちちゃうよ…。あと、大事なところは握らないで欲しいな…」


「あっ! ご、ごめんなさい…」


 アルを睨み付けたミカは、バランスを崩した。大きな二つの山を握られたミルフィーは、恥じらいながら頬を赤くした。アルとミカの息は、バッチリなようだ。


「俺達が、先頭でいいのか?」


「大丈夫~。すぐに追い越されるから~」


 アルがキキの腰にしがみつきながら後ろに振り向くと、クロムが頭上を通り過ぎる。


「おう! アル、ミカ、腰が引けてるぞ! 背筋をもっと伸ばして、重心を前に倒せ!」


「こ、こうか?」


「こうかしら?」


 上空のクロムは空いている両手でここだと腰を叩き、アルとミカは背筋を伸ばす。二人はは自然にバランスが取れていき、体の力が抜ける。見届けたクロムは加速し、アル達の遥か前方に消えていく。


「お~い! ですな~!」


 後方の乗り物から、マックスが手を振っている。合流した空中に浮かぶその乗り物には、マックスとエルルが前に座り、後ろの荷台にグレンと荷物が乗っている。


「クロムは、先に行ったかしら?」


「うん。先に行ったよ~」


「そう。それなら、私達も先を急ぐわ」


 アル達はクロムを追いかけるように、そこから更にスピードを上げた。


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2023年10月19日木曜日

10.集合

 

「うおぉぉぉっ! どうなってるんだこれ!?」


「この盾は、スタミナを消費する代わりにバリアを作り出すのですな」


「俺にもやらせてくれ!」


「いいともですな! 但し、成功するかは別ですな」


「わりー、わりー。遅れた」


 アルとマックスが会話を弾ませているとクロムが現れた。今は大きく欠伸をしている。


「遅いわよ!」


「おっ、怒んなよ! こいつの調子が少し悪くて、手間取ったんだ…」


 エルルが怒鳴り、クロムはスケートボードのような板を地面に突き立てた。


「昨日の内に、手入れしておかないからでしょ?」


「やったさ~。昨日は平気だったんだ。今朝、突然調子が悪くなってよ!

それで遅れたんだよ~」


 クロムはあまり反省していない様子だ。


「はあ…。まあ、いいわ。二人には今日の予定は伝えておいたから」


「お、サンキュー。流石、エルルだ!」


「褒めたって、何も出ないわよ!」


 クロムがエルルに顔を近付けた。怒ったような口ぶりで顔を背けたエルルだが、その頬は赤い。


「お~怖。二人共、悪かったな」


「いいよ、別に」


「私も。何となくクロムのことが分かったから」


「おい、おい…」


「クスクス」


 ミカは目を閉じて何かを悟っている。クロムは困惑し、それを見たエルルは声を殺しながら笑いを堪えている。


「ともかく! さっそく出発するか!」


「ええ!」


「行きますかな!」


「ようやくか!」


「行こう~!」


「頑張ります!」


 クロムの号令に、エルル、マックス、グレン、キキ、ミルフィー順に声を上げた。アルとミカは、憧れの眼差しで皆を見つめていた。


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2023年8月20日日曜日

9.装備


翌朝。


 アルが集合場に向かっていると、ミカに出会う。


「おはよ~アル…。ふわぁ~」


「おはよ~…。なんだいきなり? 眠いのか?」


「うん…」


 ミカは眠そうな目をこすりながら返事を戻した。


「ダンジョンが楽しみで、眠れなかったのか?」


「う~ん、違う~。昨日は近所の人が家に遊びに来てて。スカイボールの話でずっと盛り上がってたから、眠れなかったの…」


「はあ~。今日はダンジョンなんだから、早くシャキッとしろよ!」


「ふぁ~い」


 ダンジョンデビューの日ではあるが、二人の朝は和やかだった。





 二人が町外れの廃墟に到着すると、クロム以外のメンバーは既に集まっている。


「な、なんか…、皆、凄い装備よね…」


 それを見て目覚めたミカは、目をパチクリさせる。そのあと、もじもじし始める。


「恥ずかしいのか?」


「だって…」


 今日のメンバーは、全員装備を身に付けている。アルの装備は、武器が初心者用のソードとシールドで腰と背中に身に付けている。防具は、見た目がカジュアルな革性の服だ。ミカは、武器が初心者用の魔法使いの長い杖。防具は、少し厚手の布の服だ。それらは街で安く手に入れられる物でばかりで、見た目は、まあ普通だ。


「そんなの、気にしたってしょうがないだろ。それより、早く皆のところに行こうぜ!」


「もう、待ってよ~…」


 駆け出したアルも、この事を気にしていないわけではない。しかし、今は皆の装備が気になり、ミカを置いてけぼりにした。






「皆、おはよう!」


「おお! アル殿! おはようございますですな。今日は宜しくですなが、ミカ殿はどちらに?」


 アルに気付いて話しかけたブラウンの髪色の大男は、マックスだ。昨日もアル達と会話をしている。そして、語尾に「ですな」を付ける癖がある。


 マックスの装備は、武器が片手用ハンマーと大盾で腰と背中に身に付けている。防具は全身にエングレイブの刻まれたホワイトのプロテクターだ。


 この世界は機械文明が発達していて、装備品はメカニカルな物が多い。それと、エングレイブは、簡単に言えば刻印のようなものだ。これを武器や防具に刻むことで特殊効果を持たせられる。金属製の装備にはそれを削って刻むが、布製などの装備には刺繍のように刻むこともでき、それを隠すこともできる。プロテクターは、防具のパーツのことだ。


「あそこだよ。それより、クロムはまだなのか!?」


「いつものことだ。気にするな」


 外壁にもたれたまま話したオレンジの髪色の長身な男は、グレンだ。普段は無口で会話を好まないが、今は機嫌が良いようだ。その場から動く様子はなく、クロムは少し遅れて来そうだ。


 グレンの装備は、武器が長弓で背中に身に付けている。防具は、エングレイブが刻まれたベージュのスーツだ。プロテクターは右肩に付けている。


「クロムが来る前に、今日の事を簡単に説明しておくわ」


 瓦礫の上に座ったまま話したクリームの髪色の女性は、エルルだ。話の終わりに、アルと遅れて来たミカに手招する。


 エルルの装備は、武器が膝の上に置いてある長い杖。防具は、エングレイブの刻まれたピンクとホワイトのボーダーのタンクトップにピンクの短パンとロングコートだ。プロテクターは腰に付けている。


「今日は初めての探索だから、一層だけ見て回るわ。まだ何も分からないけど、今までの経験上五層は続くはずだから。一応、この事は頭の中に入れておいて」


 頷いたアルとミカは、この辺りの話はなんとなくだが理解している。冒険者になるために、勉強していたからだ。


「それと、出来立てほやほやのダンジョンだから、中に入って何が起こるか分からないわ。イレギュラーなことが起こるかもしれないから、二人はできるだけミルフィーの近くに居て。ミルフィー、いいわね?」


「う、うん。た、頼りない私だけど、よろしくお願いします!」


 側から駆け寄り勢いよく頭を下げて話したブルーの髪色の小柄な女性は、ミルフィーだ。昨日のギルド内でクロムに返事を戻したのはこの子だ。


 ミルフィーの装備は、武器が短剣と小盾で腰と左手に身に付けている。防具は、エングレイブの刻まれたブルーとホワイトのドレスだ。プロテクターは両手に付けている。


「こ~ら~。先輩なんだから~、しっかりしなさい!」


「あっ。ご、ごめんなさい。つい…」


 ミルフィーはクロムのパーティーメンバーの中で一番年下で、反射的に普段の話し方が出てたようだ。


「それから、キキ」


「な~に~?」


「キキも、二人の護衛をお願い。余程の事がなければ大丈夫だとは思うけど…」


「任せて~。アルちゃんとミカちゃんは、私が守ってあげる~」


 ふらふらとアル達の下に歩きながらまったり話したブラックの髪色の小柄な女性は、キキだ。見た目はボーっとしているが、実は性格に難がある。


 キキの装備は、武器が二丁の拳銃で腰に身に付けている。防具は、エングレイブの刻まれたブラックのボディースーツにホワイトのジャケットだ。プロテクターは両足に付けている。加えて、自前の真っ白な三角な耳と白黒の細いしっぽがある。キキは猫耳族だ。


「とりあえず、以上ね。何か質問はある?」


「移動は、どうするんだ?」


「ああ。忘れてたわ。移動はボードを用意してあるから、キキとミルフィーに付いて行って」


「わかった」


「うん」


 顔を見合わせたアルとミカは、少し頬を緩めながら頷いた。


 このあと、クロムが到着するまで、皆で雑談を交わすことになる。


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2023年8月12日土曜日

8.準備


 「出発は明日の朝だ! お前ら準備しとけよ!」


「は、はい!」


 振り向いたクロムは、そこに居る仲間達に指示を飛ばした。すると、頭からローブを纏っている少女が緊張して声を上げた。


「アル達も、それでいいか?」


「うん、いいよ!」


「私も、いいわ」


「よし! それじゃあ明日の朝8時に、南門に集合だ!」


 クロムは全員に伝わるように、再び指示を飛ばした。そして、仲間達と細かな打ち合わせを始める。


「アル。移動はどうする?」


「どうすっかな~。じいちゃんに、頼んでみるかな~…」


「それは心配するな。今回は俺達が運んでやるよ。何なら、装備も貸してやるぞ?」


 クロムたちを見ていたミカが不安げに尋ね、アルも悩んだ。クロムが振り向き二人に提案すると、ミカの顔が少しこわばる。


「そ、装備はいいわ。自分の物を使った方が、動き易いし。それに…」


「臭そうとか、言うんだろ?」


「言ってないじゃない!」


 ミカはもじもじし始め、話を途中で止めた。アルがその心を見抜き、図星なミカは顔を真っ赤に染めながら声を張り上げた。


「あははは。女の子だもんな~」


 クロムが再びミカの頭を撫でる。


「もう! アルのバカ!」


 その手を払い除けたミカは、アルとじゃれ合い始める。


「それならそっちは任せるぜ~」


 クロムはひらひらと手を振り再び仲間の方に振り向く。


「お前ら、そろそろ宿に向かうぞ」


「はーい」


 仲間のもう一人のローブを纏った少女が無感情に返事を戻し、クロム達はギルドをあとにした。


「アル。このあと、どうするの?」


「俺は明日の準備をするから、一回家に帰るよ」


「そうね。私も、明日の準備をしようかな」


 アルとミカもギルドをあとにし、それぞれの家に帰った。



 ★



「じいちゃん、ただいまー」


「おう、お帰り。どうじゃった?」


「力の適正だったよ」


「そうかそうか。良かったな」


 おじいさんはモニターを見ながら尋ね、お茶をすすりつつ返事を戻した。


「なんか、反応が薄いな~」


「まあ、予想はしてたからの。アルは不器用じゃから、こうなると思っとったよ」


 アルのハートにグサリと何かが突き刺さった。


「ふぉふぉふぉ」


「ひでーな~。まあ、いいけど」


 おじいさん微笑ましく笑い、アルの直ちに立ち直った。アルは、ポジティブだった。


「それよりさ、じいちゃん」


「なんじゃ?」


「明日、クロム達とダンジョンに行くことになったよ」


 流石に、これにはおじいさんも驚いた。


「急な話じゃな。何があったんじゃ?」


 アルはおじいさんに今日の出来事を話した。


「そうか。そんなことがあったのか」


「行っても、いいだろ?」


「ああ、構わんよ。じゃがの、ダンジョンは危険だと言うことは忘れるなよ?」


「わかってるさ」


「それならいい。クロム達に、迷惑を掛けんようにな」


「それも、わかってるよ! ところでじいちゃん、俺の装備はどこだ?」


 アルは、このままではまた昔話を聞かされると考えたのであろう。突然話題を変えた。


「それなら、洗濯をして押し入れにしまっておいたぞ」


「わかった。ありがと!」


 少し戸惑ったおじいさんがそう伝え、返事を戻したアルは押し入に向う。


(やはり、ダンジョンが現れたか…。何事も起こらなければ、いいがの…)


 おじいさんは、実はアルのことを心配していた。そして、せんべいをかじりながら、再びモニターでニュースを眺め始めた。


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2023年8月4日金曜日

7.勢い

 

「そうなのか、クロム?」


「アル! 疑うのか!? 俺はぜ~~~たい! その気はないぞ!」


「はあ、違うよ。ダンジョンのことだよ」


「んん!? あ、ああ。ダンジョンのことか。まあ、何となくな」


 頭を掻きながら未だ頬の赤いクロムを見たアルは、本当はその毛があるんじゃないかと疑った。


『パン!』


「それなら、任せちゃってもいいわね!」


「はあ~。仕方がねえ」


 ギルドマスターが突然手を叩き、体をくねらせて話をした。クロムは渋々これを了承した。そんな時、


「お…、俺も、付いて行っていいか!?」


 アルが勢い良く声を上げた。それは、この賑やかな場の空気に当てられたものかもしれない。しかし、冒険を待ちきれなかったのだ。


「アルはまだ、冒険者じゃないだろ?」


「俺も今日から冒険者だ!」


 豆鉄砲でも食らったかのような顔をしたクロムはそう尋ねたが、アルは一歩前進して思いを乗せて訴えた。すると、その背後からミカがアルの隣に並ぶ。


「ちなみに、私も今日から冒険者よ!」


「お前ら…。二人とも、冒険者になったのか! そうかそうか。良かったな~!」


 クロムは爽やかに笑いながら二人の頭を撫でる。


「や、やめてくれよ~」


「そ、そうよ。子ども扱い、しないで!」


 アルとミカはその手が嫌ではなかったが、恥ずかしいので振り払う。


「まあ、お前らの頼みなら、聞かないわけにはいかねぇか」


「ちょっと! こんな子供で大丈夫なの? 足手纏いになるわよ」


 アルとミカを見下ろしながらクロムが顎を撫でていると、突如、背後の女性がその肩を掴み忠告した。


 この女性はクロムのパーティーメンバーだが、アル達との面識はあまりない。何故なら、クロムがアル達に合うのはのおじいさんのところへ向かう時で、それは決まっていつも一人だからだ。


「こいつらなら大丈夫だ。爺さんに鍛えられてるからな。それに、初めのダンジョン探索は奥には進まないからな」


 今回のように新しいダンジョンが発見された場合は、初見では深いところまでは進まない。まずは入り口付近を調査し、そのダンジョンがどのようなものかを調べてから奥に向かうのが一般的だ。


「それはそうだけど…。この子達、装備も持ってないんじゃないの?」


「装備は…、持ってるわ! 練習の時に、使ってるものだけど…」


 ミカは馬鹿にされたと思い言い返したが、装備には自信がなかった。


「ほら~」


「そう言うなって。俺も初めての時はこんな感じだったんだ。なんとかなるさ。それに、お前達にも話しただろ。俺が初めてダンジョンに行った時の事を…」


 女性は呆れていたが、クロムが苦い思い出を思い出すように後ろに振り向くと、そのメンバーと共に苦い表情を作った。


「それが、先輩冒険者の務めというやつですな!」


 背後の仲間の一人の大男がアル達に近寄る。


「但し、自分の身は自分で守るように! そこは守ってくださいな!」


「わかったよ!」


「わかったわ!」


 こうして、勢いから出てしまった言葉が、アル達をダンジョンへと導くことになった。


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2023年8月2日水曜日

6.ギルドマスターとクロム

 


「ダンジョンだ! ダンジョンが現れたんだよ!」


「ちょっと落ち着いてください。話の内容がよく分かりません」


 アルとミカがギルドに到着すると、先程の男がカウンターで大声を上げていた。二人目の女性の職員が男に水を手渡す。


「はあ、はあ、済まない。ずっと走りっぱなしだったからな」


 男はその水を飲み干すと、少し落ち着きを取り戻した。


「ダンジョンだ。ダンジョンが現れた」


「それはさっきも聞きました。ダンジョンなんてどこにでもあるでしょう」


 この星にはダンジョンと呼ばれる、未だ解明することができない未知のエリアが存在する。それは攻略されると消滅し、また別の場所に現れる。


「違うんだ。街のすぐ近くに現れたんだよ!」


 男の言葉にギルド内はどよめく。そして、カウンターの奥からマッチョな男が現れる。


「その話は、本当なのかしら?」


 この男はオカマだが、この街のギルドマスターだ。


「本当だ、マスター。俺はこの目で見てきたんだ。信じてくれよ~」


 嘆願する男の瞳を、ギルドマスターが覗き込む。そしてじっくりと見つめたあと、


「まあっ! みんな聞きなさい! ダンジョンが出現したわよ!」


 両手を頬に添えながら姿勢を戻し、確信を持ってそう告げた。


「うぉーーー! ダンジョンだ!」


「街の近くに、ダンジョンが現れたぞ!」


「酒持って来い!」


「今日は飲みまくるぞ!」


「うぉーーーー!」


 ギルド内に歓声が巻き起こり、お祭り騒ぎになる。


「あなた。私にもう少し、詳しく説明しなさい」


 怪しく微笑んだギルドマスターは、男をお姫様抱っこする。男は、止めてくれ、恥ずかしいと泣き叫び抵抗するが、そのままギルドの奥にお持ち帰りされた。



 ★



「おう! ここも賑わってるな!」


 騒ぎ始めたギルド内の視線が、入口に集まる。そして、そこで呆気に取られていたアルとミカは横を向く。


「あっ! クロム、帰ってたのか!」


「ようアル! 久しぶりだな~。元気だったか?」


 クロムは、アルの髪をぐしゃぐしゃした。


「「「キャーーー!!!」」」


「クロム様よ!!!」


「カッコいいー!」


「ステキよー!」


「キャー! キャー! キャー!…」


『バタン バタン バタン』


 黄色い声援が飛び交い、女性冒険者達がその場に意識を失い倒れていく。そんな中、先程の男とギルドマスターが奥から戻って来る。ギルドマスターはそのまま、クロムの前に歩み寄る。


「おかえりなさいクロム。調子はどう?」


「まあ~、ぼちぼちだ」


「あらそう。それは良かったわ」


 ギルドマスターが熱いウィンクを贈った。それを切っ掛けにして、


「クロムが帰ってきたぞー!」


「うぉーーーーー、クロムだー!」


 再びギルド内が盛り上がった。


 この白髪のラフな服装をした男は、クロムと言う。この街で生まれ育った、Aランクの冒険者だ。


 冒険者には、ランクが付けられている。ランクはFから始まり、最高がSSSだ。しかし、SSSの者は現在存在しない。また、SやSSランクの冒険者も数えるほどしか存在しない。そして、クロムは次のSランク冒険者と噂をされている。


「にしても、街の騒ぎとは少し雰囲気が違うな~。何かあったのか、アル?」


「ダンジョンが、近くで見つかったんだ」


 クロムは目を丸くしたがアルの肩に片手を置き、


「はっはっは~! そりゃ~、めでていこった!」


 もう片方の手で顔を押さえて高らかに笑った。


 クロムは、アルと仲が良い。時々、クロムがアルのおじいさんに会いに、家に訪れているからだ。しかし、訪れて来る理由は、アルは知らない。


「丁度良かったわ。クロム、そのダンジョンを調べてくれないかしら?」


「おいおい。俺はさっきこの街に来たばかりなんだぜ。それに、祭りを見に来たんだ」


 ギルドマスターの話にクロムは面倒臭そうにしているが、


「そんなこと言って~。実は、気付いていたんでしょ?」


 この話にピクリと反応を示した。ギルドマスターは体をくねらせながらクロムに近づく。


「や、やめろ! 俺にその毛はない!」


 クロムは蟹股で、後ろに後退った。


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2023年8月1日火曜日

5.スキル適正と駆ける男

 


 この世界にはスキル適正と呼ばれるものがある。これはそのものの個性であり、あらゆる生物が所持している。その種類はこの様に分かれている。


☆力の適性


 物理攻撃力に影響する。


 強ければ重い物などが持てる。



☆器用さの適性


 命中率に影響する。


 弓や銃の精度が上がり攻撃を当て易くなる。



☆丈夫さの適性


 物理防御力に影響する。


 打たれ強くなる。



☆敏捷の適性


 素早さに影響する。


 速く動けるようになる。



☆知力の適正


 魔法の攻撃力に影響する。


 攻撃魔法の威力が上がり、効果範囲も広がる。



☆精神の適性


 魔法の防御力に影響する。また、回復や補助の魔法にも影響する。


 魔法に対する防御力が上がる。また、回復魔法や補助魔法の効果が上がる。



☆運の適性


 運に影響する。


 ドロップアイテムの獲得率、宝箱の遭遇率などが上がる。



☆魅力の適性


 可愛さ、かっこよさ、リーダーシップなどに影響する。


 歌い手、踊り子などの特殊効果が上がる。テイマーのテイム率も上がる。



 ★



「あ~あ。俺は力の適正か~」


「いいじゃない。そんなに悪くない適正だし。運の適性とかだったら、大変だったわよ」


「まあな~」


 力の適性は汎用性があり悪いものではない。しかし、所持者が多く平凡な適正と呼ばれる。


「それに、私の精神の適性と相性がいいんだから、これなら今すぐにでも二人でパーティーを組めるわよ!」


 それを強調したミカは、自分を売り込むためにアルに顔を近づける。お子様なアルは、その顔を両手で押し返す。ミカはむっとし、


「アルのバカ…」


 女心の分からないやつだと、両頬を膨らませた。


「そうだな。力の適性はそんなに悪いものじゃないし、我慢するか!」


「ご飯できたわよ~」


 アルが話をすると、一階から声が届いた。


「は~い。今行く~! アル、行きましょ」


「ああ、腹減ったしな!」


 それほど悪くはない結果に二人は満足し、階段を下りていく。





 お昼を食べたあとの二人は、街をぶらついている。今日はスカイボールの決勝戦が開催され、今は試合が終わり街中は花火が上がりお祭り騒ぎだ。


「何か食べよ!」


「さっき昼を、食べたばかりだろ」


「デザートよ。デザート!」


 甘いものは別腹なミカは、近くの出店からクレープを二つ買う。


「はい。イチゴで良かったでしょ?」


「チョコレートの方が良かったんだが…」


「嘘ばっかり。イチゴの方が好きなくせに」


 ミカがお揃いの美味しそうなイチゴのクレープを差し出し、アルは顔を横に背けてそれを受け取る。ミカの言う通り、アルはただ、男でイチゴ味のクレープを食べながら大勢の人混みの中を歩くことが、恥ずかしいだけだった。なんとも歯がゆい。





 賑わう街中をぶらついていると、一人の男が大慌てで大通りの人混みの中を駆け抜けて行く。額から大量の汗を流し、その姿はタダならぬものを感じさせる。


「どうしたんだ?」


「何かあったのかしら?」


 男を視線で追うと、どうやらギルドに向かっているようだ。


「行ってみる?」


「当然!」


 15歳のアルはまだまだ、好奇心旺盛だ。


「ちょっと、待ってよ~」


 駆け出したアルに、ミカは仕方がないと声を掛けた。2人は先程の男を追いかけ始めた。


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2023年7月18日火曜日

4.二人の適性


  しばらくの間、アル達は椅子に座ってスカイボールを観戦していた。そこへ、リーザが訪れる。


「はい、結果が出たわよ~。一応、中は見えないようになっているから安心してね」


 スキル適正は、冒険者にとっての秘密事項だ。検査を行ったリーザにも知られないように、機械から小さな封筒に入れられて出てくる仕組みだ。


「ありがと」


「ありがとー」


 受け取ったアルは待ちくたびれた顔をし、ミカはモニターから視線を外さなかった。


「で、試合は今、どうなっているの!?」


「えっとね~…」


 リーザがアルをお尻で押し退けて座り、ここから二人の試合観戦が始まる。封筒の中身が気になるアルは付き合うと言った手前、そこから逃げ出すことはことはできなかった。






「面白かったね~!」


「流石、決勝だったな!」


 なんだかんだ言いながらも、アルも夢中で試合を観戦していた。今は試合を振り返りながら、家に帰る途中だ。


「あの、ロベルトって人のオーバーヘッドキック! 凄かったわね!」


「ああ。密集したところからの、いきなりのシュートだったからな! キーパーも一歩も動けないでいた!」


「やっぱり~。アルもちゃっかり、見てたんじゃない~」


「あ…」


 ミカは今朝の道中の試合の出来事を話したが、アルはその時、興味がないような素振りを見せていた。しかし、実はしっかりと試合を横目で見ていた。その事がバレてしまい、アルは頭を掻いて照れ隠しをしている。


「面白かったし、今日は家でお昼を食べていかない? どうせ帰っても、何もないでんしょ?」


「いつも悪いな。お言葉に甘えて、ご馳走になるとするよ」


 アルはおじいさんと二人暮らしで、食事はいつも適当に済ませている。なので、時々ミカの家にお世話になっている。


「気にしなくてもいいわよ。家のお母さんも、アルが来ると喜ぶから」


 ミカは嬉しそうな顔をアルに見せた。アルが訪れることはお母さんだけではなく、ミカ自身も嬉しかった。


 こうして二人は、ミカの家に向かうことになった。



 ★



「お邪魔しまーす」


「あらアル君、いらっしゃい」


「お母さん、ご飯作って。もうお腹ペコペコ~」


 スカイボールの観戦をしていたので、時刻はすっかり昼になっている。


「はいはい、すぐ作るわね。それで、ギルドの適性検査はどうだったの?」


「まだ見てなーい。今から部屋に戻って見るわ」


「自分の好きな適正だといいわね。ご飯はすぐにできるから、早く降りてきないさね」


 二人は階段を上り、二階のミカの部屋に向かう。


「相変わらず、女の子の部屋だな~」


「何よ! 文句ある!?」


「いや、何でもない…」


 アルは、この乙女チックな部屋が苦手だった。そわそわしてしまい、落ち着けないからだ。





「早く、開けてみましょ!」


 アル達は座布団に座り、早速ギルドで渡された封筒を机の上に取り出した。


「何が出るのかしらね。楽しみ!」


 ミカは嬉しそうに、ハサミで封を切る。


「やっぱり魔法使いとかがいいな~。後ろなら安全だし、魔法を使える奴も少ないからな~」


 アルは話をしながら、ミカからハサミを受け取る。


「そうよね~。命あっての物種って言うし…」


 ミカは封筒の中を覗き込み、一枚の紙を取り出す。すると、


「あっ!!!」


 突然、大声で叫んだ。そして、


「見て見て! 私、精神の適性だったわよ!」


 アルを揺さぶりながら紙を見せびらかした。そのあと紙を胸に押し当てながら、目を閉じて喜びを噛み締める。


「良かったじゃないか! 前から魔法使いに、なりたいって言ってたし!」


「やっぱり私って、日頃の行いがいいのかしら。神様はちゃんと私のことを見てるのね~」


 少し羨ましく思ったがアルだがそれは顔に出さず、ここは幼いころからの希望であったミカの適性を素直に喜んだ。そのあとアルはハサミで封を切り、中から紙を取り出した。しかし、その表情は悩ましいものになっていた。


「俺は、力の適性だ」


 アルの適性は平凡なものだった。




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2023年7月15日土曜日

3.適性検査

 

 アル達はギルドに到着して中に進んだ。


「あれは凄かったな~」


「オーバーヘッドキックは最高だよな!」


「あの高い打点からは、キーパーも一歩も動けなかったな~」


 ここにもモニターがあり、スカイボールの話題でお祭り騒ぎだ。


「アル~。やっぱりちょっと見ていこうよ~!」


「まだ試合は始まったばかりだろ! あんなのを見てたら、あと二時間は掛かるぞ」


 スカイボールの試合時間は凡そ2時間だ。延長戦を含めると更に時間が掛かる。


「スキル適正をやったあとは、付き合うから~」


「絶対よ!」


 家で似てから来ればいいのにと思ったアルはカウンターに向かいながら手をひらひらさせた。必死なミカは力強くアルに訴えた。





 アル達はギルドのカウンターに訪れた。


「すみませ~ん。適性検査を受けに来ました~」


「は~い。ちょっと待ってね~」


『ワァーーー』


 カウンターに訪れたアルが奥に向けて声を飛ばすと返事は戻ってきたが、そのあと完成しか戻って来なかった。奥でもスカイボールを見ているからだ。


 アルは今日のお祭り騒ぎであればギルドは空いているであろうと甘く考えていた。しかし、当てが外れてうんざりと言った顔をする。そして更にしばらく待たされる。


「あらあら、ごめんなさいね。丁度いいところだったから、目が離せなくて」


 何の悪気もなく話をしたのは、エリーザと言う女性だ。歳は二十代後半でアル達とは知り合いだ。普段からラフなTシャツとスカートで、大人の色気を漂わせている。


「今日も二人で一緒なのね! お姉さん、焼けちゃうわ~」


「ちょ、ちょっと、やめてください! そんなんじゃありませんから!」


 ミカは未定したが顔は真っ赤だ。何故ならアルにほの字だからだ。


「はいはい、ごちそうさまでした。で、適性検査だったわね? すぐに用意するからちょっと待っててね」


 リーザはカウンターの奥に戻った。そして、アル達はしばらく放置された。





「はあ~」


「キャー! 凄いわよ! アルも見て!」


 溜息を吐いたアルだが、ミカは興奮してアルの体をぐいぐいと揺らされ今日がどうでも良くなってくる。


「お待たせ~。凄いわね~。アルも、スカイボールの選手になる?」


「ならないよ!」


 戻ってきたエリーザはからかうようにアルに尋ねたが、アルは顔を背けた。


「アル君のおじいさんは凄い人だったから、あなたもきっと凄い選手になれると思ったのに~」


「じいちゃんのことはいいから! それより! いい加減、早く終わらせてくれ!」


「はいはい。仕方ないわね~」


 おじいさんは若いころは凄かったが、アルはまだそれを理解していない。


「それじゃあ、ちょっとチクっとするけど、我慢してね」


 エリーザは適性検査のため、カウンター上のアルの左指にの道具を使った。


 この道具は洗濯ばさみのような形をしている。そこに小さな針が付いいて、採血を行う仕組みだ。


『ピピ!』


「次はミカちゃんね。アル君と同じように手をここに置いてね」


 ミカも同様にされた。


『ピピ!』


「はい。これで終わりよ。検査結果はすぐ出るから、スカイボールでも見てて」


 リーザは足早に奥のモニターへ向かった。ミカも別のモニターに向かい、


(大丈夫かな…?)


 アルの心には不安が残った。



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2023年7月9日日曜日

2.アルの気掛かり

 

「どうしたのよ? 浮かない顔をして。ひょっとして、まだ悩んでるの?」


「ん~~~」


 ミカはアルが冒険者として、どの職業に就くかを悩んでいることを知っていた。アルは腕を組みながら唸っている。


「自分の好きな道を、選べばいいじゃない? それとも、またおじいちゃんに何か言われたの?」


「まあな。盾使いになれって、しつこいんだよ」


 アルのおじいさんは、昔、盾使いだった。そのため、アルにもそれを継がせようとしていた。


「でも、そんなこと言っても、今から授かるスキル適正が盾向きなんて決まってるわけじゃないんだし、気にしても仕方がないでしょ」


 ミカの話は最もだった。


 この星にはスキル適正と呼ばれるものがある。アルのおじいさんは日本人なため、これを所持していない。しかし、その子供がこの星の者と結婚を果たして生まれアルには、これが芽生えている。


 スキル適正は、十五歳を過ぎたあとにギルドで解放の儀式を行うと判明する。そのあと、その適正と相談しながら自分の冒険者としての道を選ぶことが一般的だ。但し、この年齢制限は体に負担なくスキルを扱えるようになるのが15歳以上ということで、この街で決めたものだ。他の街ではこの限りではない。


「まあな。盾使いも悪くはないと思うけど…、やっぱりな~」


 アルは悩んでも仕方がない事をいちいち悩むタイプだったがその時、


『ワァァァーーーーー!!!』


 大歓声が至る場所から沸き起こった。今日は街中がお祭り騒ぎで、道に屋台なども並んでいる。


「凄いわよ! 見て見て!」


 ミカがアルの顔をグイっと動かした。そこには巨大なモニターが設置されていて、スカイボールと呼ばれるスポーツが映し出されている。


「今日は、決勝だったか? どっちが勝つんだろうな~」


「決まっているわよ! ミノタウロス・ホーンが勝つわ!」


 ミカはこのスカイボールのファンだった。アルを連れ回して観戦に出かけるほどだ。


「置いて行くぞ~」


 興味なさそうにして、アルは人込みの中を歩いて行く。


「ちょっと待ってよ!」


 置いていかれたミカは慌ててアルを追いかけ、再び隣に並んだ。


「少しぐらい、見ていたっていいじゃない。アルのケチ」


 アルはそれよりも、今から決まる自分のスキル適正が気掛かりだった。




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2023年7月6日木曜日

1.夢


「きゃーーーっ!」


 ダンジョン内にミカの悲鳴が響き渡る。


「どうした!?」


 慌ててクロムが振り向くと、クラブタイプのバリアントがミカに巨大な腕のハサミを振り上げていた。キキがそれを許すはずがない。素早く二丁の銃を構えた。


「どけ! 射線が通らね! チッ!」


 目の前に、アル、ミカ、ミルフィーが立ち塞がる。


「ミカ-!!!」


 駆け出したアルはそのまま地面に転がる大剣を拾い、ミカに肩からぶつかる。入れ替わったアルに非情なハサミが降り下ろされた。一瞬、アルにはそれが止まって見えた。


『ガキン!』


 アルは余裕で頭上に構えた大剣でそれを斜めに受け流し、そのまま大剣を大きく振り回しながら空中に飛び立つ。頭上に構えた大剣を、頭部目掛けて振り下ろす。


『グシャン!』


 アルは頭部を大きくかち割った。


「アル! アル!」


「ははは~。そんなに泣くなよミカ…」


「アルお兄ちゃんってば! もう! 私に起こしてって、言ったじゃない!」


 妹のモユルが怒って部屋に起こしに来たが、


「う。う~ん…。あ…。あれ~? 俺の大剣、エクスカリバーは~?」


「もう、知らない!」


 アルの目覚めは寝ぼけていて、モユルはドアをバタンと閉めて部屋を出て行った。


「あ~。あれは夢だったのか~…」


 そして、アルは出掛ける支度を始めた。





 ここは惑星:スピリット。この惑星には多くのモンスターが棲んでいて、生憎、人族とモンスターは敵対関係にある。どちらもそれを捕まえて食糧としているからだ。


 この街はラビアンローズと呼ばれている。それほど大きな街ではないが、病院などの最低限の施設は揃っている。街並みは石造りの建物が多く、緑は少ない。


 アルは地球系三世の十五歳の少年で、髪の色は黒い。地球系三世なのは祖父が若い時に地球からこの星に訪れたからだ。地球が核の冬で住めなくなり移住してきた。しかし、全く住めないという訳ではなく、一部の人々は今も地球に残っている。もう40年も昔の話になるが。


「じいちゃん、行ってくるよ!」


「おう。気を付け行ってこい」


 今日はアルが冒険者登録に向かう日だ。


「おはよ! アル!」


「うわあっ! びっくりしたな~。なんだ、ミカか」


 早速、家を出発したアルの両肩に突然背後から手を掛けたのは、近所に住む幼馴染の少女のミカだ。髪は緑色のショートボブで、目はクリっとしていて可愛らしい。ミカはしてやったりとほくそ笑みながら、アルの隣に並ぶ。


「どこに出掛けるの?」


「この格好を見ればわかるだろ。冒険者登録に行くんだよ」


「ああ~。そういえば、そんなこと言ってたわね」


「おまえこそ、どこに行くんだよ?」


「この格好を見ればわかるでしょ!」


 見た目でそれとなく気付いていたアルだが、皮肉も込めて敢えて聞き返していた。


「ついでなんだし、一緒に行きましょ!」


 こうして、アル達は二人で冒険者ギルドに向かうことになった。




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新年の挨拶5 

  明けましておめでとうございます。 小説から 第27話 ずれてる? | スキルマスター | ファンタジー小説 | 小説投稿サイトのアルファポリス スキルマスター - 35.ブロンズショートソード 「人生とは、自分を作ること」 好きな言葉です このブログの今年の予定は特...