しばらくの間、アル達は椅子に座ってスカイボールを観戦していた。そこへ、リーザが訪れる。
「はい、結果が出たわよ~。一応、中は見えないようになっているから安心してね」
スキル適正は、冒険者にとっての秘密事項だ。検査を行ったリーザにも知られないように、機械から小さな封筒に入れられて出てくる仕組みだ。
「ありがと」
「ありがとー」
受け取ったアルは待ちくたびれた顔をし、ミカはモニターから視線を外さなかった。
「で、試合は今、どうなっているの!?」
「えっとね~…」
リーザがアルをお尻で押し退けて座り、ここから二人の試合観戦が始まる。封筒の中身が気になるアルは付き合うと言った手前、そこから逃げ出すことはことはできなかった。
「面白かったね~!」
「流石、決勝だったな!」
なんだかんだ言いながらも、アルも夢中で試合を観戦していた。今は試合を振り返りながら、家に帰る途中だ。
「あの、ロベルトって人のオーバーヘッドキック! 凄かったわね!」
「ああ。密集したところからの、いきなりのシュートだったからな! キーパーも一歩も動けないでいた!」
「やっぱり~。アルもちゃっかり、見てたんじゃない~」
「あ…」
ミカは今朝の道中の試合の出来事を話したが、アルはその時、興味がないような素振りを見せていた。しかし、実はしっかりと試合を横目で見ていた。その事がバレてしまい、アルは頭を掻いて照れ隠しをしている。
「面白かったし、今日は家でお昼を食べていかない? どうせ帰っても、何もないでんしょ?」
「いつも悪いな。お言葉に甘えて、ご馳走になるとするよ」
アルはおじいさんと二人暮らしで、食事はいつも適当に済ませている。なので、時々ミカの家にお世話になっている。
「気にしなくてもいいわよ。家のお母さんも、アルが来ると喜ぶから」
ミカは嬉しそうな顔をアルに見せた。アルが訪れることはお母さんだけではなく、ミカ自身も嬉しかった。
こうして二人は、ミカの家に向かうことになった。
★
「お邪魔しまーす」
「あらアル君、いらっしゃい」
「お母さん、ご飯作って。もうお腹ペコペコ~」
スカイボールの観戦をしていたので、時刻はすっかり昼になっている。
「はいはい、すぐ作るわね。それで、ギルドの適性検査はどうだったの?」
「まだ見てなーい。今から部屋に戻って見るわ」
「自分の好きな適正だといいわね。ご飯はすぐにできるから、早く降りてきないさね」
二人は階段を上り、二階のミカの部屋に向かう。
「相変わらず、女の子の部屋だな~」
「何よ! 文句ある!?」
「いや、何でもない…」
アルは、この乙女チックな部屋が苦手だった。そわそわしてしまい、落ち着けないからだ。
「早く、開けてみましょ!」
アル達は座布団に座り、早速ギルドで渡された封筒を机の上に取り出した。
「何が出るのかしらね。楽しみ!」
ミカは嬉しそうに、ハサミで封を切る。
「やっぱり魔法使いとかがいいな~。後ろなら安全だし、魔法を使える奴も少ないからな~」
アルは話をしながら、ミカからハサミを受け取る。
「そうよね~。命あっての物種って言うし…」
ミカは封筒の中を覗き込み、一枚の紙を取り出す。すると、
「あっ!!!」
突然、大声で叫んだ。そして、
「見て見て! 私、精神の適性だったわよ!」
アルを揺さぶりながら紙を見せびらかした。そのあと紙を胸に押し当てながら、目を閉じて喜びを噛み締める。
「良かったじゃないか! 前から魔法使いに、なりたいって言ってたし!」
「やっぱり私って、日頃の行いがいいのかしら。神様はちゃんと私のことを見てるのね~」
少し羨ましく思ったがアルだがそれは顔に出さず、ここは幼いころからの希望であったミカの適性を素直に喜んだ。そのあとアルはハサミで封を切り、中から紙を取り出した。しかし、その表情は悩ましいものになっていた。
「俺は、力の適性だ」
アルの適性は平凡なものだった。

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