「そうなのか、クロム?」
「アル! 疑うのか!? 俺はぜ~~~たい! その気はないぞ!」
「はあ、違うよ。ダンジョンのことだよ」
「んん!? あ、ああ。ダンジョンのことか。まあ、何となくな」
頭を掻きながら未だ頬の赤いクロムを見たアルは、本当はその毛があるんじゃないかと疑った。
『パン!』
「それなら、任せちゃってもいいわね!」
「はあ~。仕方がねえ」
ギルドマスターが突然手を叩き、体をくねらせて話をした。クロムは渋々これを了承した。そんな時、
「お…、俺も、付いて行っていいか!?」
アルが勢い良く声を上げた。それは、この賑やかな場の空気に当てられたものかもしれない。しかし、冒険を待ちきれなかったのだ。
「アルはまだ、冒険者じゃないだろ?」
「俺も今日から冒険者だ!」
豆鉄砲でも食らったかのような顔をしたクロムはそう尋ねたが、アルは一歩前進して思いを乗せて訴えた。すると、その背後からミカがアルの隣に並ぶ。
「ちなみに、私も今日から冒険者よ!」
「お前ら…。二人とも、冒険者になったのか! そうかそうか。良かったな~!」
クロムは爽やかに笑いながら二人の頭を撫でる。
「や、やめてくれよ~」
「そ、そうよ。子ども扱い、しないで!」
アルとミカはその手が嫌ではなかったが、恥ずかしいので振り払う。
「まあ、お前らの頼みなら、聞かないわけにはいかねぇか」
「ちょっと! こんな子供で大丈夫なの? 足手纏いになるわよ」
アルとミカを見下ろしながらクロムが顎を撫でていると、突如、背後の女性がその肩を掴み忠告した。
この女性はクロムのパーティーメンバーだが、アル達との面識はあまりない。何故なら、クロムがアル達に合うのはのおじいさんのところへ向かう時で、それは決まっていつも一人だからだ。
「こいつらなら大丈夫だ。爺さんに鍛えられてるからな。それに、初めのダンジョン探索は奥には進まないからな」
今回のように新しいダンジョンが発見された場合は、初見では深いところまでは進まない。まずは入り口付近を調査し、そのダンジョンがどのようなものかを調べてから奥に向かうのが一般的だ。
「それはそうだけど…。この子達、装備も持ってないんじゃないの?」
「装備は…、持ってるわ! 練習の時に、使ってるものだけど…」
ミカは馬鹿にされたと思い言い返したが、装備には自信がなかった。
「ほら~」
「そう言うなって。俺も初めての時はこんな感じだったんだ。なんとかなるさ。それに、お前達にも話しただろ。俺が初めてダンジョンに行った時の事を…」
女性は呆れていたが、クロムが苦い思い出を思い出すように後ろに振り向くと、そのメンバーと共に苦い表情を作った。
「それが、先輩冒険者の務めというやつですな!」
背後の仲間の一人の大男がアル達に近寄る。
「但し、自分の身は自分で守るように! そこは守ってくださいな!」
「わかったよ!」
「わかったわ!」
こうして、勢いから出てしまった言葉が、アル達をダンジョンへと導くことになった。

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