翌朝。
アルが集合場に向かっていると、ミカに出会う。
「おはよ~アル…。ふわぁ~」
「おはよ~…。なんだいきなり? 眠いのか?」
「うん…」
ミカは眠そうな目をこすりながら返事を戻した。
「ダンジョンが楽しみで、眠れなかったのか?」
「う~ん、違う~。昨日は近所の人が家に遊びに来てて。スカイボールの話でずっと盛り上がってたから、眠れなかったの…」
「はあ~。今日はダンジョンなんだから、早くシャキッとしろよ!」
「ふぁ~い」
ダンジョンデビューの日ではあるが、二人の朝は和やかだった。
二人が町外れの廃墟に到着すると、クロム以外のメンバーは既に集まっている。
「な、なんか…、皆、凄い装備よね…」
それを見て目覚めたミカは、目をパチクリさせる。そのあと、もじもじし始める。
「恥ずかしいのか?」
「だって…」
今日のメンバーは、全員装備を身に付けている。アルの装備は、武器が初心者用のソードとシールドで腰と背中に身に付けている。防具は、見た目がカジュアルな革性の服だ。ミカは、武器が初心者用の魔法使いの長い杖。防具は、少し厚手の布の服だ。それらは街で安く手に入れられる物でばかりで、見た目は、まあ普通だ。
「そんなの、気にしたってしょうがないだろ。それより、早く皆のところに行こうぜ!」
「もう、待ってよ~…」
駆け出したアルも、この事を気にしていないわけではない。しかし、今は皆の装備が気になり、ミカを置いてけぼりにした。
「皆、おはよう!」
「おお! アル殿! おはようございますですな。今日は宜しくですなが、ミカ殿はどちらに?」
アルに気付いて話しかけたブラウンの髪色の大男は、マックスだ。昨日もアル達と会話をしている。そして、語尾に「ですな」を付ける癖がある。
マックスの装備は、武器が片手用ハンマーと大盾で腰と背中に身に付けている。防具は全身にエングレイブの刻まれたホワイトのプロテクターだ。
この世界は機械文明が発達していて、装備品はメカニカルな物が多い。それと、エングレイブは、簡単に言えば刻印のようなものだ。これを武器や防具に刻むことで特殊効果を持たせられる。金属製の装備にはそれを削って刻むが、布製などの装備には刺繍のように刻むこともでき、それを隠すこともできる。プロテクターは、防具のパーツのことだ。
「あそこだよ。それより、クロムはまだなのか!?」
「いつものことだ。気にするな」
外壁にもたれたまま話したオレンジの髪色の長身な男は、グレンだ。普段は無口で会話を好まないが、今は機嫌が良いようだ。その場から動く様子はなく、クロムは少し遅れて来そうだ。
グレンの装備は、武器が長弓で背中に身に付けている。防具は、エングレイブが刻まれたベージュのスーツだ。プロテクターは右肩に付けている。
「クロムが来る前に、今日の事を簡単に説明しておくわ」
瓦礫の上に座ったまま話したクリームの髪色の女性は、エルルだ。話の終わりに、アルと遅れて来たミカに手招する。
エルルの装備は、武器が膝の上に置いてある長い杖。防具は、エングレイブの刻まれたピンクとホワイトのボーダーのタンクトップにピンクの短パンとロングコートだ。プロテクターは腰に付けている。
「今日は初めての探索だから、一層だけ見て回るわ。まだ何も分からないけど、今までの経験上五層は続くはずだから。一応、この事は頭の中に入れておいて」
頷いたアルとミカは、この辺りの話はなんとなくだが理解している。冒険者になるために、勉強していたからだ。
「それと、出来立てほやほやのダンジョンだから、中に入って何が起こるか分からないわ。イレギュラーなことが起こるかもしれないから、二人はできるだけミルフィーの近くに居て。ミルフィー、いいわね?」
「う、うん。た、頼りない私だけど、よろしくお願いします!」
側から駆け寄り勢いよく頭を下げて話したブルーの髪色の小柄な女性は、ミルフィーだ。昨日のギルド内でクロムに返事を戻したのはこの子だ。
ミルフィーの装備は、武器が短剣と小盾で腰と左手に身に付けている。防具は、エングレイブの刻まれたブルーとホワイトのドレスだ。プロテクターは両手に付けている。
「こ~ら~。先輩なんだから~、しっかりしなさい!」
「あっ。ご、ごめんなさい。つい…」
ミルフィーはクロムのパーティーメンバーの中で一番年下で、反射的に普段の話し方が出てたようだ。
「それから、キキ」
「な~に~?」
「キキも、二人の護衛をお願い。余程の事がなければ大丈夫だとは思うけど…」
「任せて~。アルちゃんとミカちゃんは、私が守ってあげる~」
ふらふらとアル達の下に歩きながらまったり話したブラックの髪色の小柄な女性は、キキだ。見た目はボーっとしているが、実は性格に難がある。
キキの装備は、武器が二丁の拳銃で腰に身に付けている。防具は、エングレイブの刻まれたブラックのボディースーツにホワイトのジャケットだ。プロテクターは両足に付けている。加えて、自前の真っ白な三角な耳と白黒の細いしっぽがある。キキは猫耳族だ。
「とりあえず、以上ね。何か質問はある?」
「移動は、どうするんだ?」
「ああ。忘れてたわ。移動はボードを用意してあるから、キキとミルフィーに付いて行って」
「わかった」
「うん」
顔を見合わせたアルとミカは、少し頬を緩めながら頷いた。
このあと、クロムが到着するまで、皆で雑談を交わすことになる。

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