2023年10月24日火曜日

11.乗り物


 街の外に出ると、大きな荷台の付いた乗り物と小さ目な2つの乗り物が用意されている。アルとミカは、キキとミルフィーに付いて行く。


「私達は、これで行くよ~」


 キキが小さ目な2つの乗り物を紹介する。乗り物は2、3人が乗れるほどのサイズの板で、地面からは少し浮いている。前の部分には、上部が丸い形をした

舵取りのポールが立てられている。


「運転中は落ちないように、私達に掴まってね~」


「ミカちゃんは私の後ろに乗って」


 キキとミルフィーはそれだけ伝えると、板の上にぴょんと飛び乗る。勢いで

板が揺れることなく、安定した乗り物のようだ。アル達もそれに続いて板の上にぴょんと飛び乗る。


「それじゃ~、出発するよ~」


「ちょ、ちょっと!?」


 急発進でバランスを崩し、アルはキキにしがみつく。


「アルちゃん。私の大事なところは触らないで~」


 小さな二つの山を握られたキキは、無感情な声でアルに注意した。


「わわっ! ご、ごめんなさい…」


 アルは顔を赤くした。


「あいつ~! どさくさに紛れて、何やってるのよ! いやらしいわね~キャッ!」


「ミカちゃん、落ち着いて。あんまり動くと落ちちゃうよ…。あと、大事なところは握らないで欲しいな…」


「あっ! ご、ごめんなさい…」


 アルを睨み付けたミカは、バランスを崩した。大きな二つの山を握られたミルフィーは、恥じらいながら頬を赤くした。アルとミカの息は、バッチリなようだ。


「俺達が、先頭でいいのか?」


「大丈夫~。すぐに追い越されるから~」


 アルがキキの腰にしがみつきながら後ろに振り向くと、クロムが頭上を通り過ぎる。


「おう! アル、ミカ、腰が引けてるぞ! 背筋をもっと伸ばして、重心を前に倒せ!」


「こ、こうか?」


「こうかしら?」


 上空のクロムは空いている両手でここだと腰を叩き、アルとミカは背筋を伸ばす。二人はは自然にバランスが取れていき、体の力が抜ける。見届けたクロムは加速し、アル達の遥か前方に消えていく。


「お~い! ですな~!」


 後方の乗り物から、マックスが手を振っている。合流した空中に浮かぶその乗り物には、マックスとエルルが前に座り、後ろの荷台にグレンと荷物が乗っている。


「クロムは、先に行ったかしら?」


「うん。先に行ったよ~」


「そう。それなら、私達も先を急ぐわ」


 アル達はクロムを追いかけるように、そこから更にスピードを上げた。


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